世に捨てられびと

いろいろあって世間から捨てられました。

夕日のなかで接吻。身動きの取れない世に捨てられ人。

どうも。世捨に捨てられびとです。

 

まだ昼間の暑さが残る夕暮れ時。

駐車場の車の中で「ボー」と夕日を見

ていたら、すぐ側のアパートから若い

カップルが出てきました。

 

男性は猫背がやや気になりますが、ス

ラリとした長身。黒縁の眼鏡が似合う

インテリな感じのナイスガイ。

 

女性はその男性の肩にも届かない小柄

な体型で、一生懸命視線を上げて優し

く男性に微笑みかける今時の女の子。

 

男性だけどこかへ出かけるのでしょう

か。女の子は道路から見送っていまし

た。その姿が何ともいじらしい。

 

そこまでは、ありふれた?風景なので

すが、その後、彼女は「トットットッ」

とその男性を追いかけ後ろからハグ。

 

男性は振り返り、その流れで接吻。そ

う接吻です。幸い?にも周りには人が

おらず、すぐ側にいた私は車の中。

 

しばらくその光景が夕日の中で続きま

した。二人だけの甘い時間。私は一台

の車に取り残された置物。

 

たまたま窓ガラスが開いていたので、

車内はまだ大丈夫でしたが、それで

もムシムシした車中で、変な汗をか

いてしまいました。

 

車から出たら、音でこちらを見られ

てしまう。でも私は別に悪いことし

ていないし。とにかく静かに事の次

第を見守る?しかない。ヘタレな私

はいろいろな思いが頭の中でめぐら

せました。

 

カップルと私のこの微妙な距離は、

ロングショットで見たら、なんだか

おかしな光景であったことでしょう。

 

人生の敗者である世に捨てられ人の

私。これからしばらくは人生の喜び

を謳歌するであろうこの二人。

 

この二つの間には、その距離だけで

は説明のつかないもっと大きな断絶

があったはずです。

 

夕日がきれいでした。

 

私はすでに世に捨てられ人。

多くを望む資格はございませぬ。

 

生きててごめんなさい。